北海道 クマ笹|青汁畑

北海道 クマ笹

北海道 クマ笹 青汁畑

今も現役のクマ笹

漫画や時代劇などでおにぎりがクマ笹に包まれているのを見るたび、粋でかっこいいなと思いつつも、昔はラップもアルミも弁当箱もないから草なんかで包まなきゃいけないのかと子どもながらに現代の技術に感心・感謝したものですが、そんなクマ笹が今でもちまきやお寿司、懐石料理など日本の伝統的な料理で使われているのを知った時は驚きました。それも伊達や演出のためだけに使っているわけではなく、防腐作用や殺菌効果をもたらしているというのですから、重ねて驚きでした。
タンポポしかり、ヨモギしかり、フキノトウしかり、古くから日本人の生活に関わってきた竹馬の友である植物たちと同様に、クマ笹も現役で活躍する植物だったというわけです。それどころか北海道内だけでも数々の関連商品が販売されるようになった今は、むしろより深く日本人の生活に影響をもたらすようになっているといえます。
今回は北海道でも身近な植物であるクマ笹について、生態や効能、そして北海道を代表する動物の熊との関係性なども合わせて明かしていきます。

クマ笹ってどんな植物

日本全国に正確な分類が困難なほど多種類のクマ笹があるとされ、東日本の日本海側から北海道にかけて広く亜種が分布しているクマ笹。本州とは生態系が違うと言われる北海道にも10種類以上のクマ笹が生息しています。北海道の極寒でも生き抜く厚くたくましい緑色の葉は、船のような縦長の形状になっているため、夏場に折って作った笹船を川に流して遊んだことがある方も多いのではないでしょうか。また冬も葉を落とさないため、積もった雪の中からクマ笹を掘り起こし、雪玉をおにぎりに見立てて包んで遊んだ子どもはきっと私だけではないはず。
そんなクマ笹の名前ですが、「熊笹」と書かれる場合が多いようですが、正しくは熊ではなく「隈笹」です。名前の由来は、秋から冬にかけて緑色の葉のふちが歌舞伎の化粧の隈取りのように白く変わることから来ているようです。

栄養もバッチリ

野菜や植物といえばデリケートなものほど栄養が多く、逆に南は沖縄、北は北海道までどこにでも生えているようなものはあまり有効な成分が含まれていないイメージですが、クマ笹は生命力も栄養も兼ね備えている2刀流植物です。
北海道の厳しい冬さえものともしない厚い葉の部分には、ビタミンB1、B2、ビタミンCや、カルシウムなど健康と美容の両面に効果のある栄養素が多く含まれています。
その成分の中で最も注目したいのは、糖分の一種であるバンフォリンです。ヒリヒリする浸透薬のような、困ったときの頭痛薬のような、いかにも身体に良く効きそうなその名前の通り、細胞を抗菌・強化して免疫力を高め、腫瘍の発生を抑える効果も期待できます。ちなみに食材への防腐効果をもたらしているのもこのバンフォリンです。北海道の冬でも葉を落とさない強さの秘訣はその成分にあるのです。

クマのお墨付き

バンフォリンの他にも体内のデトックス効果のあるクロロフィルや、整腸作用をもたらす食物繊維のリグニンが含まれていて、その効果は同じ名前を持つ動物のお墨付き。実はクマは冬眠前にクマ笹を食べることでも知られていて、冬眠中は極限まで代謝を抑える代わりに毒素も溜まる一方になってしまうため、クマ笹の抗菌・整腸作用を利用して眠っている間の体内環境を整えているのだとされています。もちろん北海道の熊も、北海道の長く深い冬を越えるために大量のクマ笹を食べます。クマ笹の漢字は正式には隈ではありますが、熊と書いても一応意味は通るともいえますね。
他にも血液凝固作用のあるビタミンKやミネラル類も豊富に含まれていて、焼酎や蒸留酒に1か月以上漬けて抽出することができるエキスからはそれら全てを万遍なく摂取することができます。これぞ北海道にも適応してみせた生え抜きの力というものでしょうか。使われ続けるものには必ず理由があると言いますが、ここまで汎用性が高いものだとはクマ笹を使い始めた昔の人も想像しなかったことでしょう。

応用と注意点

そんな成分モンスターのクマ笹が、健康志向の強いこの日本で、食材のお供としてのみ働いてきたわけもなく、血液凝固作用を利用して古くは絆創膏代わりに使われたり、胃腸が弱った時や風邪のひいたときの薬として使われたりしてきたようです。クマもクマ笹も多く生息している北海道では、クマの絵柄と北海道の名前が入った関連商品が多く出ています。
乾燥させたクマ笹を煎じたお茶や、抽出したエキスを凝縮したサプリメントといった健康食品としても活躍していて、石?や歯磨き粉のような日用品、肌に塗るクリームなどの美容品、果ては北海道の牛乳と融合してクマ笹ソフトクリームなんてものもあるくらいで、もう使われていないのは衣服ぐらいというほど幅広く使われています。まさに健康大国日本の面目躍如。クマ笹の汎用性の高さは、有用なものはどこまでも使いこなす日本人の気質によって引き出されたわけです。
ただ1点だけ気をつけていただきたいのは、いくらクマ笹が有能かつ身近だからといって、入念に洗って乾燥させないうちはどんな菌が付着しているか分からないため、自生しているものを取ってそのまま食べたり使ったりしないようにしましょう。