北海道の山 青汁畑
「どこにでも名山、北海道の山」
北海道の自然をイメージする時、みなさんはどんな景色を想像しますか?おそらくは松山千春のあの名曲のような、なだらかな地平線が続く果てしない大地なのではないでしょうか。確かにそれも北海道の素晴らしい景色の一つではあります。しかし、日本は国土の約7割が山間部という生粋の山の国。中でも北海道の山の数は凄まじく、北海道だけで百名山が組まれてしまうほど至る所に山があります。
見果てぬ平野部をドライブする爽快感もたまりませんが、そこに山が加われば眺めは完璧。あっちに名山こっちにも名山という贅沢な景色を見ることができるのも北海道の大地の魅力でもあります。
遠目に眺めるだけでなく、登山、散策、夜景など、多様な楽しみ方がある選りすぐりの北海道の山をご紹介します。
函館山からの夜景
北海道の山とくれば、まずは函館山をオススメしないわけにはいきません。
ただ函館山そのものは名峰であるわけではないため、巨大にして雄大な山こそが山なのだという人には、函館山は大きめのコブにしか見えないかもしれません。しかし函館山は達成感を味わう山でも外観を楽しむ山でもなく、頂上からの絶景を望む山なのです。
特に函館市が光輝く砂時計のように見える神秘的な夜景は、香港・ナポリと並んで世界3大夜景と呼ばれることもあります。また昼には津軽海峡の先に青森県の下北半島と津軽半島を望む自然のロマンを感じられるという、ひとコブで2度美味しい北海道の山です。近代文明と大自然の調和。まさに自然の中に都市を構えた北海道の民を象徴するような景色が見られます。
真の人気者、旭岳
知名度こそ函館山に及ばないものの、こちらは標高が高く裾野も広い名峰で、北海道百名山だけでなく日本百名山にも選出されている正真正銘北海道の名山です。
北海道のほぼ中心、旭川市からほど近い上川郡にある大雪山連峰の主峰にして、北海道の山の中で最も高い標高2291mを誇る旭岳には、山の高さと雄大さに惹かれて多くの登山者が集まります。ロープウェイを利用すれば1600m地点まで行けるとあって登山初心者でも手軽に楽しめると言われています。
とはいえ、天気の変わりやすさは日本の山トップクラスで、正しいコースの目印となる金庫岩とニセ金庫岩を間違えたことに端を発するSOS遭難事件も旭岳で発生したものですし、かつ気象庁により活火山にも指定されているため、登山の際には相当の注意と覚悟と準備が必要となります。
また日本で最も早く紅葉が訪れる場所でもあるため、9月上旬には緑・赤・オレンジ・黄色の見事な自然のグラデーションを鑑賞する楽しみ方もあります。これぞまさに登って良し見て良し。北海道の山の真の人気者であるといえます。
合言葉はJAPOW、ニセコアンヌプリ
フジヤマと並ぶ勢いで外国人の間で認知されてきているのがニセコアンヌプリです。アンヌプリとは水源となっているアンベツ川の「アン」に、山という意味するアイヌ語「ヌプリ」をつけた名前だそうです。
スキーができる北海道の山ならいくつもありますが、ニセコのパウダースノーは雪質が非常に柔らかく、そのサラサラ雪を求めて世界中からスキーヤーが集まります。その柔らかさは、インスタグラムなどでは日本のパウダースノーという意味の「JAPOW」という造語が生み出されるほど。ハリウッドスターもお忍びで来ているようですが、それを探そうとも思わなくなるほど楽しく滑ることができます。
『アンヌプリ』という小気味良い山名もさることながら『JAPOW』のようなキャッチーな言葉も生まれているニセコアンヌプリは、北海道の山の中でも異色の部類に入るかもしれません。
スゴすぎて逆に近寄りがたい羊蹄山
そんなニセコアンヌプリの向かいに立ち、ゲレンデからの眺望を一層際立たせている相棒的な山が羊蹄山です。富士山と同じ円錐型の活火山であることから蝦夷富士の異名を持ち、真夏以外は頂上に雪が残っている点や、周囲5つの町の境界になっているためそれぞれの地域から違った見え方がする点、さらには山から流れる天然水の無料水汲み場がいくつもある点など、何かと富士山との共通点が多い羊蹄山。
一方、山の中腹にはエゾリスやキタキツネなどの動物たちが数多く生息している点も共通しているのですが、あまりの外観の雄々しさに、登ろうという気が失せてしまう点まで同じという悲劇。
北海道の山々の中で最も山紫水明という言葉がふさわしい山なのに、外観が凄すぎて逆に近寄りがたい。青汁という名前によって未だに近寄りがたさが残ってしまっている青汁畑と同じ境遇といえるかもしれません。
札幌の藻岩山
北海道の山というテーマでなくとも、グルメ以外の観光の話題になると何かと弾き出されがちな札幌。しかし、各地方が地元の山を誇りに思い、また山によって潤っていくのを、ただ指をくわえて見ている札幌市ではありません。
札幌市9区の中で最も広く自然が豊かな南区にそびえる藻岩山こそ、札幌が誇る隠れた名山です。従来は札幌市内のスキー場としてしか認識していなかったため、一度も観光に薦めたことはなかったため、2015年に長崎と神戸と共に新3大夜景に選出された時にはひっくり返るほど驚いたものです。
夜景の形状こそ函館山のものほど神秘的なものではありませんが、光の量と広さは函館の比ではありません。一面に広がる燦然たる夜景の美しさは、元々夜景に興味がない人でさえ魅了する力があるでしょう。
そしてこれまで紹介してきたような北海道の山と違う点は、山を降りれば日本屈指の大都市があるということ。ロマンチックな雰囲気の余韻を残しつつ、ロマンの街へ繰り出す。プロポーズや記念日にもオススメできるオシャレな北海道の山です。
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